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Polaris ~ 王座の星 ~

 

 

 

「北極星はずれている」と彼は言って微笑んだ

 

 

彼の目には

目の前にある花や 手に取ることのできる書物の様に

ごく自然に見えているのだろう

 

私には 彼の微笑みの訳がわからなかった

 

 

 

星と星との絶妙な引力で成り立つこの宇宙には

もしかしたら大きなひずみはあちこちに存在するのかも知れない

 

 

星にこころがあるのなら

ポラリスはさぞ 息苦しく感じている事だろう

 

 

星は愛であり 人は星であり 北極星は星の王である

 

 

 

北極星がずれていれば

それを周回するすべての星々はどうなるのか

 

 

その元で生きる生命 もしかすると素粒子にさえ澱が生じるのではないか

科学に疎い私にさえ容易に推測できる

 

 

きっと幸せの朝がくると信じて生きる人類の力など

ひと筋の毛ほどの力すらないだろう

 

 

 

Polarisを正位置に戻す

 

 

この宇宙の創生にまで遡る神話を新たにする民は 現れる

 

 

彼らは北極星の失われた愛を取り戻すため

 

すでに新天地を目指し

月のもと日のもと 寸暇を惜しんで魂を磨く

 

彼らの胸には強靭な獅子の如き精神が宿り

その鳩のように柔らかな肉体は光なる無縫の天衣が纏う


宇宙の開拓者たる彼らの未来は 来る

 

 

 

「北極星はずれている」

 

彼が言ったあの日から 数じゅう年が過ぎた

 

 

今ならわかる

 

彼の微笑みの裏に隠された 深く聖なる覚悟の存在することを・・・

 

 

 

 

category   date 2018.07.01